あんのこと

あんのこと (2024)

だれにも、私を殺させない

21歳の主人公・杏は、幼い頃から母親に暴力を振るわれ、十代半ばから売春を強いられて、過酷な人生を送ってきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅という変わった刑事と出会う。大人を信用したことのない杏だが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。週刊誌記者の桐野は、「多々羅が薬物更生者の自助グループを私物化し、参加者の女性に関係を強いている」というリークを得て、慎重に取材を進めていた。ちょうどその頃、新型コロナウイルスが出現。杏がやっと手にした居場所や人とのつながりは、あっという間に失われてしまう。行く手を閉ざされ、孤立して苦しむ杏。そんなある朝、身を寄せていたシェルターの隣人から思いがけない頼みごとをされる──。2024年6月7日(金)に全国公開

公開日
2024-06-07
TMDB
7.6 / 10 (15)
上映時間(分)
1時間53分
ジャンル
ドラマ
監督
入江悠

キャスト

豆知識

『あんのこと』は、2024年6月7日に公開された日本映画。監督は入江悠、主演は河合優実。PG12指定。

製作

この映画の原案は、2020年6月に朝日新聞で報じられた1人の女性の新聞記事である。記事によれば、その女性は幼少期からの虐待や薬物依存を乗り越え、夢であった介護福祉士になることができ、夜間中学で学ぶはずだったが、コロナ禍で前途を阻まれ、2020年春に自死したとあった。新聞記事上ではこの女性が「ハナ」の仮名で呼ばれていたため、以下「ハナ」と記述する。

映画プロデューサーである國實瑞恵(株式会社鈍牛倶楽部の社長)はこの記事に衝撃を受けて、コロナ禍を経ての社会の分断によって苦しむ人たちが多く、その影響は弱い立場の人ほど大きいということに憤りを憶え、「ハナ」の人生を残すことに強い使命感を抱き、映画監督の入江悠に映画制作の話を持ちかけた。

入江は当初、「ハナ」のような女性を理解の困難な縁遠い存在だと思っていた。しかし、実際には東京のどこかですれ違っていても不思議ではなく、隣の部屋に住んでいる可能性すらある人物であり、そうした人物に対して、自分が全く思いを馳せたことがなかったことが、この映画の制作のきっかけとなった。また入江は、この記事を読んだ後、「ハナ」の更生に携わっていた刑事が、別の更生者への性加害で逮捕されたと報じられていたことを知り、このことに先の記事よりも大きな衝撃を受けたこと、人間の複雑さにも衝撃を受けたこと、この2つを組み合わせたらどんな映画になるかとの興味も、この映画の制作にもつながった。

奇しくもこの映画の企画が始動した時期も、コロナ禍から間もない2020年初夏であり、入江自身もコロナ禍で2人の友人を失うという、個人的な事情を抱えていた。それまではその友人たちと頻繁に連絡を取り合っていたものの、コロナ禍が連絡が途絶えた間に起きた悲劇に、入江は大きな衝撃を受けた。「ハナ」が生きる目標をコロナ禍で喪失したように、コロナ禍で人間がたやすく孤立して絶望に陥ると考えられたこと、コロナ禍の記録を残したいとの思いも、この映画の製作に大きな影響を及ぼした。

國實は2022年公開の映画『PLAN 75』のプロデュースも手掛けており、この映画にも『PLAN75』のスタッフが多数参加した。撮影監督の浦田秀穂もまた、『PLAN 75』の撮影に携わっていた人物であり、主人公を撮影する際の距離感は、この浦田が何通りも試した撮影によって培われた。

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