エロ将軍と二十一人の愛妾 (1972)
可愛い奴め 喰べてしまうぞ!
安永二年十月五日、日蝕の最中に二人の男児が誕生した。御三卿の一ツ橋刑部卿・治済の嫡子・豊千代と、越後の国のとある貧しい農家に生まれた角助である。やがて、学問好きの豊千代は次期将軍に決定。一方、角助は無類の女好きに成長した。そんなある日、十一代将軍就任を目前にした豊千代が、不慮の災難に遭遇。それを知った女鼠小僧は、民百姓を苦しめる幕府を懲らしめようと、豊千代と瓜二つの角助を身代わり将軍に仕立て上げる。こうして将軍の座を手に入れた角助は、持ち前の好色を発揮して昼夜構わず大奥通いを始めるのだった。
キャスト
豆知識
『エロ将軍と二十一人の愛妾』(えろしょうぐんとにじゅういちにんのあいしょう)は、1972年(昭和47年)12月2日公開の日本映画。東映京都撮影所製作、東映配給。R18+。
製作
企画、及びタイトル命名は岡田茂東映社長。1972年春『徳川セックス禁止令 色情大名』の初号試写が東映京都撮影所で行われ、試写終了後、鈴木則文と一緒に廊下に出た岡田社長が、「おい、最初のナレーションで、二十一人の愛妾とか、何かええ文句言うとったなあ。あれ使えるかもしれんな」と言った。冒頭のナレーションとは「この将軍、家治、まことに精力絶倫。御台所を別にして、二十一人の愛妾あり。その腹から誕生した生命、五十と四ツ」で、鈴木が「あれは、大量生産された子供をどうするかの説明ですが…あれが何か?」と聞いたら、岡田が「企画案だ…二十一人の愛妾…語呂もいい。時代劇にピッタリだ。研究してみい」と言い残した。鈴木はその話を全く忘れていたが、数ヵ月後、企画会議で岡田に「池玲子主演で時代劇をやらせて下さい」と言ったら、「よっし、タイトルは『エロ将軍と二十一人の愛妾』や」と言われた。岡田の脳裏に先のナレーションの短い一節がずっと宿り、題名を完成させていた。
製作の決定は1972年秋で、逆算すると脚本にかける時間は20日程度しかなく、例によって天尾が「名作路線に何かいいヒントはないかなあ」と東映的脚色術を持ち出し、世界人類の遺産、世界の名作にヒントがあると、鈴木が『王子と乞食』を下敷きにすることを思いついた。池玲子を鼠小僧にするアイデアは掛札が出したもの。権力のインチキ性を笑い飛ばすというのがコンセプトとしてあり、天皇制批判をエロ描写を通して行うという意図があった。杉本美樹が輿入れするシーンで葵の御紋が菊の紋章にオーバーラップするシーンは会社からカットされた。
鼠小僧に扮する池玲子は時代劇初挑戦。時代劇のエキスパートに時代劇の芝居を一から手とり足とり教え込まれた。鈴木は池に「お前のことを馬鹿にしている奴らを見返してやれ」と励ました。動きもきれいで勘もいい池は、細かい雨の中、蛇の目傘の池が刺客に襲われる『緋牡丹博徒 一宿一飯』の再現を決して見劣りしない見事な殺陣を披露するなどしている。
東映の収益の柱だった任侠映画が、この年3月、藤純子が引退したあたりから、客足が落ち、経営が厳しくなっていたことから、岡田社長が非効率な東映の東西のどちらか撮影所を潰すのではという噂が立ち始めた。「京都育ちの岡田社長が京都を潰すわけがない」などと笑い飛ばす者もいたが、鈴木は流行の発信地は東京に集まっており、潰されるとしたら京都の方と考えていたため、本作を東映で製作される最後の時代劇になるかもしれないと、東映時代劇の掉尾を飾るにふさわしい反逆の旗が翻る一大笑喜劇にしようと鈴木と天尾は秘かなる決心をした。
本作撮影中の京都に東京から深作欣二が乗り込んで来て『仁義なき戦い』の撮影を始めた。本作に出演する川谷拓三や白井孝史、ノンクレジットの志賀勝ら、後にピラニア軍団を結成する連中に鈴木が、明け方になった撮影を終え、「ご苦労さま…今日はゆっくり寝てくれ」と感謝と労いの言葉をかけると、拓三たちが「そうもいきまへん。今日は朝8時出発で『仁義』のロケですわ。また走らせられますわ。せやけどサクさんの組はやり甲斐がありますわ。スターもわしらも平等やさかい」などと話していたという。
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