転校生 (1982)
尾道市。中学生の斉藤一夫の学級に、一文字違いの転校生・斉藤一美がやって来た。一美は幼稚園時代の友達だといって一夫に付きまとうが、一夫はまったく覚えていない。下校中、2人は神社の階段からもつれ合うように転げ落ち、目覚めるとなぜか互いの体が入れ替わっていた。突然女の子の体になった一夫、男の子になった一美、混乱する2人は、元に戻るまで外見に合わせてそれぞれ相手の家で生活することになるのだが……。
キャスト
- 小林聡美 — Kazumi Saitoh
- 尾美としのり — Kazuo Saitoh
- 佐藤允 — Akio Saitoh
- 樹木希林 — Naoko Saitoh
- 宍戸錠 — Kouzou Saitoh
- 入江若葉 — Chie Saitoh
- 志穂美悦子 — Mitsuko Ono
- Sayuri Ishibashi — Girl Student 'C'
- Maki Akita — Girl Student 'B'
- Masae Hayashi — Akemi Yoshino
- 人見きよし — Innkeeper
- Kouichi Inoue — Jiroh Saitoh
豆知識
『転校生』(てんこうせい)は、1982年(昭和57年)4月17日に公開された日本映画。製作は日本テレビと日本アート・シアター・ギルド、配給は松竹。監督は大林宣彦。主演は尾美としのりと小林聡美。上映時間は112分。
エピソード
大林が『転校生』を尾道で撮ろうと決めた動機として古い尾道の友人から「尾道には新幹線も通らん(新尾道駅の開業は1988年)、アンノン族も来ん、ディスカバー・ジャパンとも無縁じゃ。何とか観光資源が欲しいんじゃ。お前のように古里を離れた人間には分からんじゃろう」と言われたことが切っ掛けとしてあるという。「ぼくなりに出来る事は何か?映画を作ろう。この尾道の素晴らしさを映画に描いて、全国の人に知ってもらおう」「地方ロケは何かと経費が嵩んで大事になるだろうが、よし、ここで一番古里孝行だ」と考え尾道での撮影を決めた。企画準備に入って一年後のことだったという。
ところが本作品に出てくるのは「観光名所」や「近代的に開発された町並み」などではなく、「近所の民家」やら「ひび割れた瓦屋根」「今にも崩れ落ちそうな土壁」「路地裏」など、尾道のそのままの姿。そのため尾道における完成披露の試写会では終わった時に拍手も起きなかった。日本中が絵葉書のような観光地になっていった時代、「ゴミ箱のような尾道の恥部が映っている。これではとても観光客誘致にはとてもならん。上映中止に出来ないか」「金が有れば直ぐにでも直したい、恥ずかしい場所ばかり映し出されたのでは、アンノン族など見向きもせんわ!」などと、きわめて評判が悪かった。尾道の行政関係者には未だに「大林は尾道の発展を30年遅らせたアホ監督だ」と言う者がいるという。大林によれば『東京物語』の尾道をいまでこそ、尾道の人は自慢するが、公開当時は皺くちゃのじいさんばあさんばかり出して、小津を「アホ監督」呼ばわりしていたと証言している。尾道の大人たちからの評判は散々だったが、しばらくすると町に変化が起こった。
「おぉ、尾道の景色か。」と佐藤允の台詞で始まるオープニングシーンで映される8ミリフィルムは、大林が当時17歳の娘・千茱萸にフィルムを10本渡して「尾道の風景を撮って来て」と尾道に撮影に行かせたもの。大林映画初出演となった佐藤は「大林さんがチャールズ・ブロンソンのファンだから、顔の似ている僕に声をかけたんじゃないかと思う」と話している。
前述のように出資を決めていたサンリオが「破廉恥すぎる」と突然降りてしまったたが、もう自分たちで作るしかないと覚悟を決めた。新幹線の乗る金はないので、スタッフは全員バスで尾道まで移動した。尾道の細く縦横無尽に延びる猫道を、少数精鋭のスタッフ&小林聡美や尾美としのりら、キャスト、地元尾道の支援者も一丸となって機材を毎日現場まで手で運んだ。映画音楽を作曲する予算がないので大林の尾道の実家にあった『クラシック名曲集』LP一枚で済ませた。クラシックは著作権フリーで、当時日本映画の映画音楽にクラシックはほとんど使われていなかった。「タイスの瞑想曲」や「トロイメライ」など、誰もが馴染み深いクラシック名曲の数々が嫋嫋と流れ効果を挙げている。学生服は大林の中・高校時代のもの。エキストラを雇えないので映っているのは芸達者なスタッフたち。大林千茱萸は、つまり完全に「プロの映画屋による自主映画」と述べている。「撮影部さんが照明部の機材を持ったり、俳優部も小道具を持ったり、本当にみんなが助け合うような現場だった。
ATG代表の佐々木史朗がお金を集めてくれたが、お金が届いたのは撮影終了後の9月頭で、まるまる一か月、全くの無一文で尾道で撮影した。それができたのは尾道の人たちの協力があったからで、大林の父親に対する信用があったからという。本作は尾道でのオールロケーションであるが、お金がないため大きなセットは組めずに例えば、主人公の斉藤一夫、斉藤一美宅として撮影された家は、実際の民家を借りて、部屋のシーンもその民家の中で撮影した。部屋の作り込みでは、地元の建築事務所社長が協力し、大林のイメージに沿った洋服ダンスや机を調達し模様替えなども行った。小道具はほとんどが一般家庭からの借り物。スタッフや俳優が宿泊するためのホテル代の支払いは一か月待ってもらった。斉藤一夫、斉藤一美宅として撮影された家は、2014年現在も現存しているが、斉藤一美邸は空き家になっている。斉藤一夫邸は『転校生-さよなら あなた』でも吉野アケミの実家のうどん店という設定で撮影に使われた。斉藤一夫邸は「鵤(いかるが)邸」といい、築117年。
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