手紙

手紙 (2006)

兄貴、元気ですか? これが最後の手紙です。

直貴の兄は、弟の学費欲しさに盗みに入った屋敷で誤って人を殺し服役中だった。大学進学もあきらめ、工場で働く直貴の夢は幼なじみの祐輔とお笑いでプロになることだったが、毎月刑務所から届く兄の手紙が彼を現実に引き戻す。そんな彼を食堂で働く由美子が見ていた。

公開日
2006-11-03
TMDB
6.5 / 10 (15)
上映時間(分)
2時間1分
ジャンル
ドラマ
監督
生野慈朗

キャスト

豆知識

『手紙』(てがみ)は、東野圭吾の小説。第129回直木賞候補作。のちに映画、舞台(演劇、ミュージカル、朗読劇)、テレビドラマなどのメディアミックスが展開されている。

制作背景

東野は以前から、誰かが罪を犯した際、何の責任もない加害者の家族がどのような人生を送ることになるのかに関心を持っていた。罪を犯した本人は刑務所に入る一方、その家族は社会の中で生活を続けなければならない。その題材をミステリーにする構想もあったが、考えるうちに、事件そのものではなく「加害者の家族」の問題だけを描くことを決めた。そこで、親のいない二人きりの兄弟を設定し、兄が殺人を犯した場合、刑務所から弟にどのような手紙が届くのかを考えた。

東野は手紙の実態を知るため法務省を取材したところ、受刑者から届く手紙は「当たり障りのない呑気な内容」になるとの説明を受けた。手紙はすべて検閲され、不平不満を書けば反省していないと受け取られたり、性的な願望を書けば危険性があると判断されたりするため、受刑者は自らの反省を記すほかなく、やがて書くことがなくなる。それでも外の世界とつながる唯一の手段である手紙に何かを書こうとするため、「今日は何をした」「何を食べた」といった無難な内容になってしまうという。この説明に東野は納得し、刑務所から届く呑気な手紙によって弟が苦しめられる物語へと構想を固めた。

一方で東野は、『片想い』のように作品を通して自分なりの明確な結論を出せていたわけではなく、加害者とその家族がどう接すべきかについて、道徳的な答えを示すことも考えなかった。代わりに、自分がその時点で示せる精一杯の答えを、作中で就職先の社長が主人公に与える、冷淡で現実的な助言に託した。東野にとって、それは道徳の教科書のような正論ではなく、自身が作品を通して提示できる限界まで考え抜いた結論だった。

ラストについても、東野はその先の登場人物たちの人生を想像できず、「もうあのようにするしかなかった」と振り返り、そこまでが自分に書ける限界だったと語っている。後日、作品を読んだ死刑囚から「なぜ私たちの気持ちがこんなによくわかるのか」と問いかける手紙を受け取り、「あなたにも殺人者の素養があるのではないか」と書かれていたことにショックを受けたという。

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