故郷 (1972)
瀬戸内海の小島に住む一家が、押し寄せる高度経済成長の波に追われ、それまでの慎ましくも幸せな生活を手放すまでの揺れ動く心情を哀惜をこめて描いた人間ドラマ。監督は“男はつらいよ”シリーズの山田洋次。瀬戸内海の小島、倉橋島。精一と民子の夫婦は石船と呼ばれる小さな砕石運搬船を生業としていた。夫婦は美しい自然に囲まれ、二人の子どもと清一の父親とともに、裕福ではないにしても楽しく満ち足りた日々を送っていた。そんな夫婦には最近ひとつだけ悩みがあった。長年仕事を共にしてきた大切な石船のエンジンの調子が思わしくないのだった……
キャスト
- 倍賞千恵子 — Tamiko Ishizaki
- 井川比佐志 — Seiichi Ishizaki
- 笠智衆 — Ishizaki Senzo
- 前田吟 — Kenji Ishizaki
- 阿部百合子
- 矢野宣
- 田島令子
- 渥美清 — Matsushita
- Hiro Kasai
- Kenichi Matsuno
- 杉田俊也
- Ken'ichi Matsuno
豆知識
『故郷』(こきょう)は、1972年に松竹が製作、公開した日本映画。山田洋次の監督による、いわゆる民子三部作(1970年の『家族』、本作、1980年の『遙かなる山の呼び声』)の第2作。
製作
山田洋次が渥美清ら数人とで旅行に出掛けることになり、「瀬戸内の島に行ってみよう」となった。広島駅で列車を降りて、連絡船で瀬戸内の島々をあちこち巡った。倉橋島の丘の上で座って休憩していたら、石ころを山ほど積んだ小さな木造船が眼下をゆっくりと進んで行った。石の重みで今にも沈みそうな船の甲板を波がざぶざぶ洗う。船長の後ろでは、小さな子供が船から落ちないように紐で手すりに結びつけられていて、奥さんらしい女性が洗濯物を干していた。たった一つの映像が一本の映画を生むことがある。モデルとなったこの石船の船長も映画と同じく、撮影の翌年には大きな鋼鉄船に仕事を奪われ、中世以来の長い歴史がある誇り高い瀬戸内の海運業も終わりにした。高度成長期という荒波にあっという間に押し流されてしまい、人々に育てられ、大切に守られてきた、きめの細かい文化も一緒に消える、炭鉱の灯が消える1977年の『幸福の黄色いハンカチ』も瀬戸内の石船を描いた本作も同じテーマをモチーフにしたものと山田監督は話している。
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