馬 (1941)
Ine Onoda, the eldest daughter of a poor family of farmers, raises a colt from birth and comes to love the horse dearly. When the horse is grown, the government orders it auctioned and sold to the army. Ine struggles to prevent the sale.
キャスト
- 高峰秀子 — Ine Onoda
- 竹久千恵子 — Saku Onoda, Ine's mother
- 藤原釜足 — Jinjiro Onoda, Ine's father
- 二葉かほる — Ei, Ine's grandmother
- Takeshi Hirata — Toyokazu Onoda, Ine's older brother
- 細井利雄 — Kinjiro Onoda, Ine's younger brother
- Setsuko Ichikawa — Tsuru Onoda, Ine's little sister
- 丸山定夫 — Master Yamashita, the teacher
- 沢村貞子 — Kikuko Yamashita
- 小杉義男 — Zenzo Sakuma
- 馬野都留子 — Mrs. Sakuma
- Ayako Matsuoka — Their daughter
豆知識
『馬』(うま)は、東宝映画株式会社と合資会社映画科学研究所の共同製作で1941年(昭和16年)に公開された日本の映画である。東北の農村を舞台に、少女と馬とのふれあいが、山本嘉次郎が得意としたセミドキュメンタリーの手法で描かれている。
エピソード
冒頭に当時の東條英機陸軍大臣の推薦文がついているなど、一見軍馬を育てる国策に沿っているようであるが、映画全体にはその要素が薄い。もとは1938(昭和13)年9月20日に岩手県盛岡で行われた馬の競り市の活気ある様子と、そこにかすかに娘の泣き声が混じっていたのを偶然ラジオで聴いた山本監督が、そこからこの映画を発案したものである。企画を通すために奇策を弄して、軍馬の育成を描く映画を作るべきだと軍に働きかけ、軍から映画会社に製作を命令させたのだった。
黒澤明がチーフ助監督に就いていた。当時、監督の山本は掛け持ちで多数の映画の撮影を抱えていて、準備中の映画の原作・脚本も十数本に及ぶ超のつく売れっ子であった。特に『エノケンの孫悟空』の撮影のためにロケ現場から東宝撮影所に引き返すことも多く、本作の大部分を占めるロケ撮影については、手間も暇もかかるため、黒澤に任せっきりであり、実質的には黒澤が監督に近い状態だった。そのために高峰は、「半分くらいは黒澤さんが撮っていましたね」「あれ(馬)は、黒さんの写真」と語っている。
脚本もまた山本名義ではあるが、初稿から決定稿まで、東北の生活や風習、方言などを現地取材するうちに何度となく推敲を施さざるを得なくなり、多忙な山本は、最終的なリライトを完全に黒澤に任せざるを得なくなった。編集、ダビングなどのポストプロダクション作業も黒澤が担当しており、黒澤の処女作に近い作品とも言える。同じく助監督として本作に付いた堀川弘道は、「半分近くはクロさんが書いたもので、それだけクロさんは自由に腕が振るえた」と証言している。山本もまた、「私の演出を補って、『馬』という作品を良くして呉れていることを、感謝している」と述べている。いねが馬に乗って弟の汽車を見送るシーンなど、後の黒澤映画を連想させる。これらについては、黒澤の著書『蝦蟇の油 自伝のようなもの』(岩波書店)にも詳しく書かれている。
この映画の撮影で主演の高峰と黒澤が恋に落ちた。きっかけは、初めて馬に乗った高峰が落馬しそうになり、それを黒澤が優しく抱き留め、背中を撫でたことである。山本の懐刀の黒澤と、高峰の義母の肝いりの監視役が付いた主演女優との、撮影中の親交には限度があり、デートと言えばロケ先の映画館の「ベルリン・オリンピック記録映画」を見に行ったくらいのものであったが、黒澤との仲が噂されていた山本監督の妹が撮影の見学に来た時、高峰が二人の仲を疑って拗ねてしまい、その日の撮影が中止になったこともあった。この映画撮影終了後の昭和16年、黒澤が新しく仕事部屋を借りた際、黒澤は高峰に「(高峰の家の)すぐそばだ、遊びにおいで」と誘った。2、3日後、高峰が自宅を抜け出してその部屋を訪問するや否や、その直後に義母に連れ戻され、一週間自宅の二階に軟禁された。高峰が連れ戻された翌朝、偶然にも新聞に「黒澤明と高峰秀子が婚約」という記事が出、驚いた高峰の義母、山本、東宝専務・森岩雄の三者は協議の上、二人を引き離すことで決着した。
山形県最上町で長期ロケが行われた。その際に当時アイドルの高峰秀子に一目惚れしたのが、地元の門脇貞男少年(後のケーシー高峰)で、芸名も初恋の人たる彼女に由来する。
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