鍵

鍵 (1959)

発表当時、その大胆な性の取り扱いゆえに国会で論議されるほどのスキャンダラスな話題を呼んだ谷崎潤一郎のベストセラー小説を、もっとも脂の乗っていた時期の市川崑監督が映画化した作品。初老の古美術鑑定家(中村鴈治郎)とその妻(京マチ子)、さらには娘(叶順子)の恋人の医師(仲代達矢)を交えた4人の奇妙な関係と異常な性愛を官能的に描く。カラーの発色を極力抑えた宮川一夫の撮影も秀逸。カンヌ映画祭審査員特別賞、キネマ旬報脚本賞ほか受賞。

公開日
1959-06-23
TMDB
6.2 / 10 (36)
上映時間(分)
1時間48分
ジャンル
ドラマ, コメディ
監督
市川崑

キャスト

豆知識

  • 原作:鍵
  • 受賞:2 · ノミネート:1. 主な受賞:Samuel Goldwyn International Award; カンヌ国際映画祭 審査員賞

『鍵』(かぎ)は、谷崎潤一郎の同名の小説(1956年発表)を原作として、1959年(昭和34年)に市川崑が監督し、大映東京撮影所が製作、大映が配給して6月23日に公開した日本の長篇劇映画である。併映短編は『桂離宮』、6月24日から一部の上映館で『二十四時間の情事』。当時の「映画倫理管理委員会」(新映倫、現在の映画倫理委員会)は同作を成人映画に指定し、18歳未満の鑑賞を制限した。公開時の惹句は、「愛欲描写の凄まじさに、映画化不可能を叫ばしめた谷崎文学の完全映画化!」である。1964年5月16日に成人映画として再上映されている。併映は『この道赤信号』。

製作・評価

大映が映画化を企画して程なく、その性表現を巡って原作が国会でやり玉に挙げられる等、社会的な騒動となった。原作者の谷崎潤一郎は、同じ作家で大映の重役でもある川口松太郎に映画化の断りを入れ、1年ほど製作は停滞する事になる。その後、映画化の際に監督を打診されていた市川崑の元に、谷崎と親交のあった映画評論家で映画解説者でもあった淀川長治から「谷崎さんが映画化をOKしてもいいっていう話があるんだけど、あなた、やりますか?」と電話連絡があった。市川は淀川と映画世界社の橘弘一郎の3人で、熱海にある谷崎の邸宅を訪れて映画化権を貰った。谷崎曰く「国会の騒ぎも静まったし、何百万もする仏像が欲しくて金がいるから、映画化を許すことにした」とのことだった。原作料は当時の金額で150万円で、市川の妻で脚本も担当した和田夏十が貯金をおろして用立てた。このため通常とは逆のパターンで、監督が権利を取って会社に与える流れで製作は始まった。

映画化に際し、市川は原作の持つ耽美主義を映画的に処理すると、不細工なダイジェストになると考え、一種のミステリーと解釈して、題名の「鍵」の意味合いも全く別物に変えてしまった。完成した脚本を読んだ谷崎は「これはちょっと違うんじゃないか」と意見したが、それ以上は特に揉めることもなく、制作作業は続けられた。市川は、人間の奥底に潜む「陰性」を追求するため、表情を能面のように変えないメーキャップを役者全員に施したり、主要人物以外は直接画面に映し出さない等の演出を行った。これは当時、市川がフランス映画に傾倒していた事も起因している。本作では『炎上』で初めてコンビを組んだカメラマンの宮川一夫との呼吸も合い始め、色彩設計や撮影終盤にまとめて行う小物撮影などを、滞りなく進めることができた。

公開された映画は国内で大ヒットし、前述のように国内外で様々な賞を受賞したが、映画史家のジョルジュ・サドゥールが「スキャンダル目当てに、西洋諸国向けに製作されている」「優れた映画を今も製作しつつある日本が、カンヌにこんな胸糞の悪くなるような汚物を送ってきたのはなぜだろう。大女優マチコ・キョウがこの映画に出ていることは何という悲哀であろう」と酷評するなど、国内外での評価は賛否両論だった。

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