野菊の墓 (1981)
明治末期、15歳の少年と17歳の少女の淡い恋と、周りの大人たちの中傷で悲しい結末をむかえるまでを描く。伊藤左千夫の同名の小説の映画化で、過去に「野菊の如き君なりき」の題で木下恵介、富本壮吉で二度映画化されており、今回が三度目。脚本は宮内婦貴子、監督はこれがデビュー作となる澤井信一郎、撮影は森田富士郎がそれぞれ担当。
キャスト
- 松田聖子 — Tamiko
- 桑原正 — Masao
- 加藤治子 — Kiku Saito
- 樹木希林 — Omasu
- 白川和子 — Sei Tomura
- 北城真記子
- 叶和貴子 — Goze
- 愛川欽也 — Shinkichi Tomura
- 常田富士男 — Passerby B
- 武内文平
- Ryuji Sawa — Passerby A
- 湯原昌幸 — Tsunekichi
豆知識
『野菊の墓』(のぎくのはか)は、伊藤左千夫の同名小説を原作とし、1981年8月8日に公開された東映東京撮影所、サンミュージック製作、東映配給の日本映画である。松田聖子の初主演作、及び澤井信一郎の初監督作品。カラー、ビスタサイズ、映倫番号:110419/110419-T1(特報)/110419-T2(予告編)。
製作
企画は東映プロデューサー・吉田達。吉田は東陽一監督が1979年に『もう頬づえはつかない』を低予算で製作しながら大ヒットさせた手腕に感心し、劇場に女性客が多いことに驚いた。女性客は画面の軽快なナウい会話に、一々反応して楽しんでいる、東映調とは全く違った洋画テイストと、さりげないエンディングに興奮した。さっそく東と組み、烏丸せつこ主演で『四季・奈津子』(1980年)を製作し、当時の日本映画では珍しい女性映画を小ヒットさせた。また東映本社近くの喫茶店に入ったとき、若いカップルの行動を観察していたら、主導権が女性が持っていることに気づいた。女性が観たい映画を男性も付き合っている、それなら、自分の大好きな木下惠介監督の『野菊の如き君なりき』をリメイクして、女性が泣ける『野菊の墓』をやってみたい、主演は人気が急上昇していた松田聖子で作ってみたい、と思いついた。
しかし問題はその岡田茂東映社長の説得。岡田は1971年の社長就任以降、1978年まで副社長、専務どころか、常務すら一人も置かず、1986年にようやく専務を置いたが、長く自分以外に役員を置かない完全なワンマン体制を敷いていて、代表権者を盾に、岡田好みの企画しか絶対に通さず、岡田が了解しなければ東映で映画は製作されなかった。
ある日、企画会議で岡田が「ヤクザ映画は男性が女性を連れてくる」と言ったため、吉田はすかさず手を挙げ「『クレイマー、クレイマー』を観ているカップルは、男性は眠っていて女性が涙しています。今は女性が男性を連れてくる時代なんです」と意見したら、「そんなことわかっとる!!」と30分間説教された。岡田は撮影所長時代は企画者たちを週に一度集めて話し合いをしていたが、社長になってからは「プロデューサーはアイデア勝負だから、いつでも社長室に来い」とプロデューサーに伝えていた。吉田が「女性が泣ける『野菊の墓』をやりたいんです!」と岡田に訴えたら、案の定、「松竹に持って行け!」と言われて終わり。検討すらされなかった。
企画が通る前の1980年10月25日、吉田は新宿コマ劇場横のアマンドで、松田聖子の所属事務所・サンミュージック・森口健専務と交渉。「東宝から既に松田聖子主演企画が持ち込まれている」といきなり言われ、目の前真っ暗に。ハードタッチの東映からの話に「それで..東映さんはどんな企画で?」と不安そうに言われた。ところが「『野菊の墓』を」と伝えると森口の顔が途端にほころんだ。サンミュージック企画部の第一位案が『野菊の墓』だった。こんなことは滅多になく、単なるアイドル映画ではなく、きちんとした文芸作品に松田聖子を主演させるという基本線も全く森口と意見が一致した。サンミュージック・相澤秀禎社長の了解も得て、撮影に充てる10ヶ月先に約二週間の松田のスケジュールを押さえてもらった。しかし岡田社長がなかなか企画を通してくれない。人気絶頂になりつつあった松田聖子をせっかく押さえたのにその価値が分かってもらえない。
サンミュージックサイドとしては、松田が郷ひろみとの噂が立ち始めたため、その対応策としてサンミュージックと所属レコード会社・CBS・ソニーとで話し合いがもたれ、CMを持っていた資生堂から「噂が立てば、レコードの売り上げが落ちることは否定できません」と示唆され、松田を郷のイメージに固定させないために企画されたとされる。山口百恵と三浦友和のように、映画やテレビドラマの共演を切っ掛けに、恋人関係に発展したケースも多く、またファンもそのように見ることも多いことから、それを期待したものと考えられる。
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