白蛇伝 (1958)
蛇精の姫、幻術使い、珍獣の数々の乱舞跳梁
白蛇の精・白娘は、幼い頃可愛がってくれた許仙のことが忘れられず美しい娘となって彼の前に姿を現した。二人を手引きするのは、魚の精の少青。たちまち二人は恋に陥ってしまう。しかし、このことはたちまち法海和尚の知るところとなり、妖怪に魅入られた若者の命を慮る和尚は、法力をもってこの恋を妨げようと決意するのであった。だが、二人の恋は上々の首尾で花咲き乱れる美しい屋敷の庭をそぞろ歩くなど、夢うつつのひとときを過ごしていた。許仙と仲良しのパンダとミミーの二匹も、少青と一緒に屋敷の中を遊びあるき、あげくの果てに柱の飾り龍を引きずり落としてしまった。龍は勝手に動き出し、パンダとミミーそして少青をつかまらせたまま、夜空を飛び回って宝物殿に落ちた。少青はそこで拾った宝石を許仙と白娘に与えたが、これが二人を引き離すもとになる。
キャスト
- 森繁久彌 — Xu-Xian / Fa-Hai / Panda / Dragon King / Catfish King / Narrator (voice)
- 宮城まり子 — Bai-Niang / Mimi / Xiaoqing / Duck / Weasel (voice)
豆知識
- 原作:白蛇伝
『白蛇伝』(はくじゃでん)は、中国の四大民間説話のひとつ『白蛇伝』を題材にした、日本最初のカラー長編漫画映画(アニメ映画)である。カラー、スタンダード(長編作では唯一)・Westrex RECORDING SYSTEM、79分、映倫番号:10796/10796-T(予告編)。昭和三十三年度・芸術祭参加作品。文部省選定(少年向・家庭向)映画であった。アニメ映画ではあるが、森繁久彌が初めて東映の映画作品に出演したものである。
製作の経緯
日本発の初のカラー長編アニメ『白蛇伝』が作られるきっかけとして、東宝が香港のショウ・ブラザーズと共同制作した実写映画の『白夫人の妖恋』(1956年、東宝)がある。池部良、山口淑子、八千草薫らが出演したこの映画は林房雄の小説『白夫人の妖術』を原作とするが、小説自体が中国の説話『白蛇伝』を翻案したもので香港で興行的に大成功を収めた。これを受け『白夫人の妖恋』をアニメ化する企画が香港の映画界から東映に持ち込まれた。
これがきっかけとなり、当時の東映の社長・大川博は、香港の下請けとしてでなく、独自の本格的なアニメ映画をつくることを考え始めた。当時大きな興行収益を上げるアニメはディズニー映画のみだったが、日本においてアニメ映画製作の体勢を整えていけば、将来大きな産業になるのではないかという、鉄道省の役人から東急の専務、そして東映の社長へと叩き上げてきた大川の、経営者としての予測もあった。
2時間規模のカラーアニメ映画を目指し、東映の教育映画部が中心となって『白蛇伝』の企画がスタートした。この企画のために集められたスタッフには、赤川次郎の実父である教育映画部の赤川孝一、キャラクター原案と美術を担当する岡部一彦(漫画家岡部冬彦の実兄)、NHK技研出身で美術担当の橋本潔、演出担当の藪下泰司などがいる。
とはいえこの当時の日本には、アニメを制作する会社は影絵動画を含めてもごく少なく、そのいずれもが僅かの社員を抱えるのみの小会社だった。例えば業界最大手だった日動映画ですら、社員20数名の社屋のない会社であり、高校の空き教室を間借りしアニメ製作をしているような状態だった。
また、それまでに作られた最大規模のアニメ映画は大戦中の国策映画『桃太郎 海の神兵』(1945年、松竹動画研究所、白黒)で、上映時間は74分だった。アニメーションの専門家と言える人材がいない状況で、2時間規模のカラーアニメをつくろうとするこの試みは、当時の常識から考えて極めて無謀とも言えた。
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