君よ憤怒の河を渉れ (1976)
逃げろ! 憤怒の化身となってー 追え! 男の悲しみの果てまでもー
西村寿行の同名小説を原作としたサスペンスアクション作品。 検事の杜丘冬人は新宿の雑踏で見知らぬ女から「金品を盗まれ強姦された」と告発され緊急逮捕されてしまう。他の男も「カメラを盗まれた」と供述、逮捕に必要な証拠も揃っていた。自分にかけられた罠を取り除くため、現場検証の場から逃走を図る冬人。女の正体をつかみ彼女の郷里へ向かうが、すでに女は殺されており、冬人は殺人犯として追われることに。日高山中に逃げ延びた冬人は、自分をはめた真犯人が政界の黒幕である長岡了介ではないかと思い始める。
キャスト
- 高倉健 — Morioka
- 中野良子 — Tonami Mayumi
- 原田芳雄 — Detective Yamura
- 池部良 — Ito
- 大滝秀治 — Tonami Yoshinori
- 内藤武敏 — Sakai Yoshihiro
- 西村晃 — Nagaoka Ryokai
- 倍賞美津子 — Otsuki Kyoko
- 田中邦衛 — Yokomichi Keiji
- 岡田英次
- 阿藤快
- 久富惟晴
豆知識
『君よ憤怒の河を渉れ』(きみよふんぬのかわをわたれ)は1974年発行の西村寿行の小説。またそれを原作として大映・永田プロが製作し、1976年(昭和51年)2月11日に松竹系で封切り公開された日本映画は『君よ憤怒の河を渉れ』(きみよふんどのかわをわたれ)と漢字表記は同じだが異なる振り仮名である。
製作
大映を倒産させた永田雅一は、1975年4月に自宅や劇場などを売って弁済し、法律上の責任を終えたことから三年半ぶりにプロデューサーとして復帰した。ただ組合との紛争は未解決であった。このため永田は金を全然持っておらず、生活するのがやっとの状況。本作は大映を買った徳間康快が、国際的に知名度の高い永田を引っ張り出したものであった。永田は映画界に大きな功労のあった人ではあったが、業界からは「あんなに迷惑をかけておきながら、よくもカムバックされたものだ」という見方が強く、業界からは全然人気がない人で、旧大映の重役にも慕う者はおらず、当然お金を進んで貸す人もいないため、製作費2億円のほとんどは徳間が工面した。製作費は3億5000万、高倉のギャラ2000万円(推定)、傷害保険1億円と書かれた文献もあり、封切り時のポスターには製作費5億円、撮影日数6か月と書かれている。1975年10月に北海道であったロケ現場を永田も訪れ、大好きな馬に囲まれご満悦で「それにしても痛快だよ。
1975年5月19日、東京ヒルトンホテルで永田のプロデューサー復帰会見があり、永田は「映画に生き、映画に死んでいきたい。いま一度映画プロデューサーとして生きていきたいと恥を忍んで復帰しました」と述べた。この時、本作を第一作とし1975年6月末クランクイン、1975年10月公開を予定していると話した。永田は一プロデューサーとして東奔西走。『新幹線大爆破』を観た本作のプロデューサー・宮古とく子が『新幹線大爆破』の坂上順東映プロデューサーに「監督に佐藤純彌を貸してくれ」と頼んだとされ、監督に東映専属の佐藤純彌と同じく主演に東映専属の高倉健を借りるため、永田が岡田茂東映社長に頭を下げ、承諾を得た。高倉のギャラは1500万円。高倉の他社出演は勝プロ製作、東宝配給の『無宿』に続いてのもの。『サンケイスポーツ』1975年10月8日付の記事でも「東映が高倉を大映に貸した」と書かれている。岡田から配給など他の協力は勘弁してほしいといわれ、配給先に難航し空中分解になりかけた。
1975年9月20日、クランクインに先立ち、調布大映撮影所で『君よ憤怒の河を渉れ』製作発表があり、"永田ラッパ"が吹き荒れるかもと期待し大勢の報道陣が集まった。会見で永田は「こんど新大映の徳間氏の協力で、私の復帰第一作を撮影する運びになった。監督の佐藤君、主演の高倉君は東映の岡田社長の好意によるもので、また配給は松竹ときまり、関係者に感謝している。老い先短いが、今後は大作と言われるものを年に一本は作りたい。十年生きれば十本は作りたい。その中で三本ぐらいグランプリを狙いたい」と少しラッパを吹いた。徳間は「永田氏の復帰第一作を日本映画界あげて協力する作品になった。大映映画としても第三作であるので全力をあげていい作品にしたい」と述べた。
高倉の恋人役の中野良子は、撮影前に東京上用賀の馬事公苑で乗馬の練習中に落馬し、頭を打って失神し、二週間入院した。撮影ではそれを感じさせない向こうっ気の強さで、高倉も中野のじゃじゃ馬ぶりを気に入っていた。
高倉を追いかけ回す刑事役・原田芳雄は三つ揃えのパリッとしたスーツを着込なす当時の原田としては珍しい役。汚い革ジャンやジーンズが原田のイメージだったため、原田もスーツ姿を喜び「映画がこんなに楽しいものとは知らなかった」と話した。
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