炎上 (1958)
何が彼に放火させたのか......
溝口吾一は父の親友が住職をつとめる驟閣寺に住み込むことになった。驟閣寺はこの世で最も美しいものと教え込まれた吾一だったが、やがて観光客が多数訪れるようになり、信仰の場ではなく単なる観光地に成り下がってしまうのを目の当たりにする。古谷大学に通うようになった吾一は戸苅という学生と知り合うが、戸苅は驟閣寺の美を批判し、住職の私生活を暴露した。
キャスト
- 市川雷蔵 — Goichi Mizoguchi
- 二代目 中村鴈治郎 — Tayama Dosen
- 仲代達矢 — Tokari
- 北林谷栄 — Aki, Goichi's mother
- 舟木洋一 — Tsurukawa
- 浜村純 — Goichi's Father
- 浦路洋子
- 新珠三千代 — Mistress of the floral art
- 信欣三
- 中村玉緒 — Woman at Gobancho
- 香川良介 — Priest Zenkai
- 水原浩一 — Prosecutor
豆知識
- 製作費:¥2000万
- 原作:金閣寺
『炎上』(えんじょう)は、1958年(昭和33年)8月19日公開の日本映画。製作は大映。三島由紀夫の長編小説『金閣寺』をもとに市川崑監督が映画化した99分のモノクロ作品である。
製作の経緯
大映のプロデューサー・藤井浩明は、人情劇が主流の当時の日本映画に新しい息吹を入れたいという考えの元で、観念的なものでもいいから今までに無いような映画を製作する構想をし、三島由紀夫の小説『金閣寺』が雑誌『新潮』に連載され第1回(1956年1月号)を読んだ時から「これだ」と思っていた。藤井は三島原作で同時期連載の『永すぎた春』の映画企画もすでにやっており、三島作品の映画化に積極的であった。
藤井は市川崑に監督を依頼するが、『金閣寺』を読んでいた市川は文学作品として完成度の高い原作の「素晴らしい名文」の観念世界を映画で表現するのは不可能と考え、「とても僕の手には負えない」と一旦断った。しかし3か月もねばる藤井の熱心さに押され、「自分の手に負えないものを何とか征服したい」という気持ちも起ったために引き受けることになった。
しかし、『金閣寺』の映画化に対して、金閣寺の住職からやめてほしいというクレームが入った。金閣寺だけでなく京都の仏教界も反対し、今後大映には時代劇の撮影はさせないと通達が来た。大映が金閣寺を説得するも、なかなか承認を得られず、社長の永田雅一も困り果て「もうやめろ」と市川監督らに言い出すようになった。
すでに美術スタッフらは真面目な古建築研究者のふりをして寺を訪問し、内部写真をたくさん撮って調べていた。市川監督も京都の実景を撮り始めていたため、いまさらやめたくなく、直に老師を説得するため会いに行き、そこでの話し合いでタイトルを変えることと、寺の名前も「金閣寺」としないことでやっと了承を得た。その際、クレジットに「三島由紀夫の原作『金閣寺』より」と入れることは承諾された。このクレームや、後段で説明する配役変更で製作に入るのが予定よりも半年以上も遅れることとなった。そのため、会社から穴埋め映画を1本作るよう市川監督に打診があり、米国推理小説の『すばらしき罠』を脚色した映画『穴』が製作された。
市川監督は原作小説の世界観を生かすために構成などを変えることにしたが、脚本家の和田夏十(市川崑の妻)と共にシナリオ作りに難航していた。そのことを藤井浩明が三島由紀夫に話すと、三島は何かの参考になればと「『金閣寺』創作ノート」を貸し、託された藤井が市川監督にそれを渡した。市川監督はそれを参考にしながら夏十と変更点などを練り上げ、新たな脚本が出来上がっていった。
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